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![]() 私が「地下室の手記」を初めて手に取ったのは大学に入ったばかりの頃で、それは江川卓さんの訳によるものでした。 私も相当に自意識過剰なので、自分のことを書かれているようで恐ろしくなりました。冷や汗をかきながら読んだ覚えがあります。あまりの恐怖で「この本は世に出してはいけない」とすら思ったほどです。 同時に、考え過ぎてしまうのは自分だけではないのだと、ほっとしたことも覚えています。それから10年ほど経ち、安岡治子さんの訳による「地下室」に出会いました。 その頃の私は、考え過ぎる癖を活かし、なんとか劇作家としてかけ出していました。ようやく自分を客観視するようになってから読む「地下室」は抱腹絶倒で、新しい訳の柔らかさも更に共感を呼ぶものでした。 その後も何度か読み返し、いつしかこれを舞台作品にしてみたいと、思うようになったのです。 自意識や自尊心というのは、若者に限らず、今も大きな問題です。演劇では観客が空間を共にします。二十歳の私が悶絶したように、三十路の私が爆笑したように、それぞれ反応は違うと思います。その反応の仕方にも、自意識が大いに反映されるでしょう。 自分の人生をどう受け入れるのか、他者をどう受け入れるのか、そのようなことを、現在の日本の物語として構成した、ユーモアあふれる舞台になっています。 どうぞご期待ください。 ![]() |